水彩絵の具は種類が多すぎて違いが分からない…
と絵の具選びで迷う人は多いのではないでしょうか。
透明水彩や不透明水彩、ポスターカラーなどの絵の具がありますが、違いについて初心者はいまいちピンときません。サンプルでみると、同じような色に見えます。
そこで、絵の具の種類や選び方、特徴を詳しく見ていきたいと思います。
水彩絵の種類
まず水彩絵の具にはどのくらい種類があるのか見てみましょう。ざっと分けると、
②不透明水彩絵の具
③ポスターカラー
④固形水彩絵具
⑤そのほか顔料、メディウムなど
大きく5つに分かれます。小学校、中学などで親しみのある絵具は透明水彩、不透明水彩なのではないでしょうか。それでは具体的に特徴をみていきましょう。
動画でも特徴が見られます!
透明水彩と不透明水彩絵の具
まずは透明、不透明水彩絵の具を比較してみましょう。
透明水彩
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特徴:絵具の透過性(透明感)が高い、淡く繊細なタッチ
不透明水彩絵具(ガッシュ)
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特徴:下の層を覆い隠せる隠蔽力があり、重厚で力強いタッチ
主な違いはこのような点です。表現の違いを見ると、色を塗り重ねた際に下地が透けて見える色を「透明色」、下地を覆い隠してしまう色を「不透明色」です。
表現の違い 混色と重ね塗り
透明・不透明水彩絵の具の特性を生かした表現の特徴を見てみましょう。
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透明水彩絵具は色を混ぜたり、多めの水で色を塗り重ねて混色を表現できます。絵の具が乾く前も乾いた後もどちらも楽しめます。
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一方、不透明水彩絵具は下の色の影響をあまり受けずに色を重ねられるので、少量の水を使うとムラになりにくいです。
グラデーションやぼかし表現しやすいのが透明水彩、重ね塗りでマットに色濃く表現できるのが不透明水彩です。それぞれの特性はまったく異なります。
ポスターカラー
ポスターカラーはポスカと呼んで小学校でペンタイプを使用したことがある人もあるかもしれません。のびの良さと不透明度の高さが特徴のポスターカラーは一見すると不透明水彩絵具と似ています。
不透明水彩は、透明水彩の顔料の量を多くし、固着材の量を減らすことで顔料・固着材比を大きく上げたものです。一方、顔料の一部を体質顔料で置き換える、または安価な顔料や固着材を用いるなどして価格を抑えたものがポスターカラーです。両者は原料が異なります。
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ホルベインのポスターカラー プラス(真ん中)は乾燥後は弱耐水性で少しだけ水の通過を防ぐ性能になります。
乾燥後に水がはねても、絵具が溶けたり跡が残ってムラになったりしません。乾いた後塗り重ねでも色が濁りません。
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不透明でつやのない鮮やかな発色なので一見するとアクリル絵の具のようですが、水彩なのでパレットで固まった絵具は、水でさっと洗い流せます。
固まった筆や衣類についた絵具も簡単に洗い落とせ、後片付けが簡単なのがアクリル絵の具と違います。
固形水彩絵具
固形水彩絵具は使いたいときに筆に水を含ませてすぐに使えます。最初から固形でパレット不要なので用意するものは紙と筆、筆洗があればOKです。
なめらかな水どけと色のびで各色を楽しみたいならセットがおすすめです。持ち運びしやすい大きさで屋外での絵画活動をより楽しめます。
顔料ペースト
様々な絵具の色の元となる顔料は、微粒子の粉末です。その顔料を高分散化し練り状のペースト状にした顔料ペーストもあります。粉末ではないので飛ぶ心配がなく作業がしやすいです。
「顔料」そのもので展色材(糊)は入っておらず、絵具と比べ非常に濃度の高いです。
ホルベイン 水彩メディウム アラビアゴム メディウム 60ml
アラビアゴム水溶液やアクリルエマルション(グロスメディウム)、膠液などを加え、水性絵具を自作したり、水性絵具に混ぜ、絵具の濃度調整ができます。作りたい絵具の固さに仕上げることができます。
水彩用メディウム
表現力やテクニックの幅を広げる水彩画専用のメディウム。水だけではつくれないさまざまな表情が生まれます。
先ほどの顔料と合わせるアラビアゴムなどもメディウムの仲間ですが、他にも様々な種類があります。
例えばイリデッセント メディウムを使うと、絵具に真珠のような輝きと光沢を与えます。絵の具と混ぜずにメディウムだけ乾燥後の画面上に塗ることもできます。
動画で水彩用メディウム7種類を解説
特性の見分け方
絵の具の種類は大きく分かれるものの、同じ透明水彩でもメーカーやシリーズ(ブランド)によって違いが分かりにくいですね。100均から海外の高級メーカーまで幅広い種類があります。特性を見るポイントとして、
・カラーのラインナップ
・使用感
・耐光性
こちらになります。実際のところ、のびムラなどの使用感は使ってみないと分かりません。使用する前に確認できることを詳しく見ていきましょう。
特性の確認方法
顔料の情報や耐光性についてはメーカー情報や絵の具チューブのラベルからも確認することができます。例えばホルベインの水彩絵の具の記号を見てみましょう。よく見ると、色んな記号が小さく書かれてあります。こちらは耐光性記号や透明性記号でそれぞれに意味があります。
透明性記号を見ると、この水彩絵の具は「不透明よりの半透明色」であることが確認できます。※メーカーにより表示方法、基準は異なります
選ぶときの注意点
ホルベインの透明水彩を見ましたが、選び方の注意点として
・絵の具の原料
・絵の具のラベル
この3つに注意すると、より絵の具の違いが分かり、理解が深まります。詳しく見ていきましょう。
絵の具の色名
絵の具の色名(名前)はややこしさがあります。同じような色でもメーカーで色名は異なることや、同じ色名でも色が違うことがあります。絵具の色名には規則等はなく、各メーカーがそれぞれの意図をもって決めているからです。
絵の具の原料
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中身や製造方法にはそれぞれ違いがあります。単一顔料の絵の具や、あらかじめ混合された調合色の絵の具は大きな違いですが、単一顔料でも顔料の化学物質、製造法は異なります。
ブランド、シリーズによってわずかに色や質感に違いがあるのはこのためで、原料の配合バランスや焼成温度など繊細に決めてつくられています。
絵の具のラベル
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先ほどチューブに記載の記号についてお伝えしましたが、製品ラベルには様々な記載があります。
メーカー内での基準や記載方法は異なりますが、APマークやCLマークなど、安全基準に関わるものはラベルの表示がされています。安全性が高い製品か確認できるので判断基準のひとつとして参考にするといいでしょう。
【まとめ】
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絵の具選びは実際に描いて表現を実感する楽しみもあります。気に入ったアイテムに出会うまでの過程はありますが、リピートしたくなるアイテムに出会うと心が踊ります。
自分の表現にぴったりのアイテムに出会って下さい。