「クサカベ画溶液 基本素材と補助材料」のブログの続きです。
画溶液の特徴は大きく4種類に分かれます。ペインティングオイルの元となる基本素材と画面修理や定着用に使用する補助材料、画面の質感を調整する描画オイル、仕上げニス用の画面保護材です。
このブログでは描画オイルと画面保護材を詳しく見ていきたいと思います。
描画オイルの種類は大きく4つに分かれる
描画オイルは油絵具の乾きを早める乾燥促進剤、描く表現に合わせてブレンドされた調合溶き油、絵具と混ぜて使用するメディウム、画面を保護するニスの4種類に分かれます。
1 乾燥促進剤
乾燥促進剤は油絵具の性質を保持したまま乾燥を速めることができます。
ホワイトシッカチーフ
油絵具に混ぜながら使用し、乾燥を早める添加剤です。ブラウンシッカチーフよりも穏やかに作用し、シワよりの心配が少ないです。無色なのでホワイト類にも使用できますが、多量に用いると黄変の原因になるため注意しましょう。
ブラウンシッカチーフ
強力な乾燥促進剤です。濃い紫色の液で、急速に乾燥速度のため絵具のシワを作りやすい特徴があります。
ブラウンシッカチーフと絵具の割合
混合割合はシッカチーフ1に対し絵具20が理想です。パレットの上で混ぜましょう。※超乾燥メディウムとペインティングクイックドライなど、乾燥が強力なオイルは併用しないようにしましょう。思わぬトラブルを引き起こす場合があります。
2 調合溶き油
何種類かの油・樹脂を混ぜて使いやすくしたものが調合溶き油になります。
例えば、「ネオペインティングオイル」が1本あれば絵を描くことはできます。調合でもそのままでも使えるような濃度バランスに設定されているので、初心者が使いやすいオイルです。
慣れてきたら「テレピン」や「ペトロール」で濃度調整すると、より快適に描画でき、作品自体の耐久性もよくなります。
ネオペインティングオイル
サラッとして流動性が高く、光沢・乾燥性ともに穏やかなので描き始めから仕上げまで利用できます。
ペインティングオイルスペシャル
濃度が高く、乾燥性も高いですが、さらさらした揮発性油が多めなので、粘りは少なく高い流動性があります。サラッとしているので筆運びはいいですね。
ペインティングオイルクイックドライ
ペインティングオイルの中で一番乾燥速度の速い溶き油です。濃度が高く、ソフトな光沢があります。
粘りが出やすいので容器のふたをしっかり閉めて保存しましょう。粘り気があると、筆運びに影響が出てきます。
ダンマルペインティングオイル
スタンドオイルと天然ダンマル樹脂を主成分とする、透明性のある本格的な調合溶き油です。ハチミツ状の粘りがあります。
古典的材料による調合で油絵具本来の光沢ある画面を再現し、優れた重層効果をもたらします。※高濃度ですので、段階に応じてテレピンやペトロールで希釈して下さい。
コーパルペインティングオイル
コーパル樹脂を導入した古典的本格処方の溶き油で、速乾性があり、強い光沢が得られます。少し粘り気のある溶き油です。画面にツヤを出したい、ツヤを保ちたい時に使います。
ペインティングオイルだけでもこんなに種類があるんだね。選ぶポイントは?
粘性の度合いや乾きの速度など、制作のイメージにあわせてコントロールしやすいオイルを選んでね
3 メディウム(ゲルメディウム)
油絵具に直接混ぜて乾燥を短縮させる、強力なチューブタイプのメディウムです。乾燥速度や特徴などはそれぞれ違います。
超速乾メディウム
速乾タイプの画用液は、屋外スケッチでは蒸発が速いので使いづらいかもしれません。天気の良い日は、パレット上で絵具があっという間に乾きはじめてしまいます。
超速乾メディウムの混ぜ方
①絵具に混ぜるメディウムは絵具とほぼ同量
②ナイフを使いムラにならないようによく混ぜる
③メディウムを使用すると透明感が増します
クイックドライングメディウム
※厚く塗るとちりめんジワが寄りやすいので薄塗りにしましょう。
クイックドライングメディウムの使い方
①絵具に直接メディウムを混ぜる
②ムラにならないようナイフを使ってよく混ぜる
クリスタルメディウム
アルキド樹脂を主成分とした速乾性描画用メディウムです。絵具のコシと透明性を損なわずにタッチを活かしたツヤ消し効果と厚塗りで盛り上げができます。
多く混ぜるほどつや消し効果は上がりますが、色が薄くなるので注意。また、混ぜる比率は一定にしましょう。乾燥後の塗り重ねがあまり効かないので、即描向きです。
クリスタルメディウムの混ぜ方
①絵具とメディウムをパレットに出す
②ナイフでムラにならないようよく混ぜる
③マットな質感で色が僅かにトーンダウンしています
メディウムは他メーカーの速乾メディウムと併用できるのかな?
併用すると配合バランスがくずれてシワの発生など思わぬトラブルを招くことがあるから単独がおすすめよ
4 描画・加筆用ニス
完成作品の見栄えをよくするとともに、絵具の劣化を防ぎます。描画用ニスは制作途中の段階でツヤが引いてしまった画面に光沢をもたらします。加筆用ニスは乾いた画面に加筆すると、描きたての光沢をもたらします。
パンドル(描画用)
ダンマル樹脂をペトロールで溶解し、濾過精製したもの。ポピーオイルを加えて描画用にしたツヤ出しワニスで、黄変は少なめです。透明性で粘りがあり、乾燥を速め、ツヤをもたらし、絵具の固着をよくします。
グレージングバニス(描画用)
乾性油、精製石油、樹脂を主成分とする伝統的な配合の描画用ニスです。透明性に優れたベネチアテレピンが含まれており、ガラスに匹敵する透明な効果を出し、油絵具に混ぜるだけで使えます。
グレーズ層を重ねる場合は下層より上層の乾性油(スタンドオイル)分を高めて下さい。下層を溶かさずに描きやすくなります。
グレーズ層とは薄く絵具を重ねて塗って透明感を表現する技法のことよ
ルツーセ(加筆用)
一時的にツヤを均一化して描き加えを容易にする画用液です。ダンマル樹脂をペトロールで溶解したもので、パンドルに比べて乾燥を早く、通気性をよくするために樹脂量を少し控えています。部分的に塗ると色彩のバランスがとりにくいので全体に塗りましょう。
描画用と加筆用と2種類あるんだね。ちょっと分かりにくいなぁ
使用タイミングがそれぞれ異なるよ。加筆用のルツーセは長期にわたる作画の場合、画面上で古い部分と新しい部分でつやの差が出来てしまうときに活躍するよ
仕上げ用ニスに使う画面保護材
作品が仕上がり、絵具が乾燥してから画面の上に塗布する仕上げ用のニスです。一度塗ると除去が困難なものもあるので使用方法に注意しましょう。
タブロー
特殊合成樹脂をペトロールで溶解した、画面の保護・ツヤ出しに使うニスです。天然樹脂による伝統的な製品で、使用は作品完成後6~12ヶ月後、油絵具が完全乾燥してから柔らかい毛の筆で均一に薄く塗りましょう。スプレータイプのタブロースペシャルもありますよ。
クリスタルバニス
合成樹脂を主成分とする、仕上がった画面の保護・つや出しニスです。タブローと同等の性質ですが無色透明のため淡色系の保護ニスとして重宝します。
また、タブローより安定した物性を有し樹脂溶液としての使い方もできます。経年変化した塗膜や汚れをテレピンで除去しながら何度でも塗りなおしが利きます。
タブロースペシャル
特殊な合成樹脂をペトロールで溶解したワニスです。指触乾燥で塗布できます。発表や展示に迫られた時の急ぎのニスがけに効果をもたらします。
タブローに比べると保護効果は弱く、画面効果を重視した仕上がりで温和な光沢が特徴です。※乾燥したニス層はテレピンで除去することができます。
指触乾燥とは指で触っても塗料が付かなくなるくらいの乾燥状態のことだよ
グロッシーバニス
アルキド樹脂を使用した強い光沢を有するニスで、乾燥後は「テレピン」や「ペトロール」では溶かせません。
下の絵具の乾燥が不十分だと、下層を溶かす場合がありますので、描画用に使う場合は絵具に直接混ぜて、光沢と強度をつけ加えるような使い方がおすすめです。※強固なニス層を形成するため乾燥後の除去は困難です。
仕上げニスをする日は天候が重要って本当?
高湿度、雨天の日に塗布すると白く濁ることがあるよ。乾燥しやすい天気の良い日に塗布しましょう!
まとめ
いかがでしたでしょうか。画溶液は種類が多くて覚えるのが大変ですが、必要なものだけ、徐々に揃えていきましょう。使用方法を守りながら、表現の幅を広げてみてくださいね。
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