画溶液は油彩画を描く上で欠かせません。選び方ひとつで作品の仕上がりが全然変わってきます。
「クサカベ」の画溶液は初心者向けのペインティングオイルから特殊なオイルまで揃っていますが、使い方を間違えると大変なことに。
そこで、トラブルになった原因や気をつけるポイントを見ていきたいと思います。あくまで一例ですが、参考にしてみてくださいね。
ケース1 作品表面に亀裂が入ってしまった
基底材(一番下の描く素材)から亀裂
土台となるキャンバスの部分から、ヒビがが入ってしまった時に考えられる原因と対策方法です。
原因1 ジンクホワイトを使用していた
下地からジンクホワイトを使用すると、亀裂の原因となります。油と反応して金属石けんを作ってしまう特性があるからです。
原因2 厚塗りのしすぎ
絵具を極端に厚塗りしたり、上層の絵具に乾燥剤を多く使っていませんか?-度に絵具を厚塗りしたり、下と上の絵具の乾燥速度が大きく違うと亀裂の原因になるので避けましょう。
原因3 油分のバランス
テレピンやペトロールなど、揮発性油を多く使っていませんか?顔料に対して油分が少ないと画面の塗膜が弱まり、亀裂の原因にもなります。塗膜を強化する乾性油分を多くしましょう。
光沢をもたせ塗膜を強化する乾性油はポピーオイルとリンシードオイルがありますが、リンシードオイルの方が塗膜強度が高いです。
絵具表面のみの亀裂
下塗りの絵具が乾燥不十分のまま絵具をのせると起こりやすくなります。絵具の油分の少ない上に、油分の多い絵具をのせるようにしましょう。調合油やアルキド樹脂を含む画用液を使うのもいいですよ。
ペインティングオイルスペシャルは乾燥も早い調合油です。
ケース2 絵具が剥離(ハクリ)した
剥離は亀裂がさらに進行し、キャンバスから絵具層が剥がれてくる状態です。
基底材(一番下の描く素材)から剥離
湿度の高いところで描いたり保管しないようにしましょう。また、使用前はキャンバスの汚れをきれいにふき取り、きちんと乾燥させてから使用しましょう。
絵具表面のみの剥離
油絵具の補助剤として使われるロウや、金属石けん、シッカチーフに含まれる乾燥剤などを多く使用すると起きる可能性があります。これらは画面の表面に浮き出やすく、絵具の固着力を疎外する恐れがあります。
剥離対策にはサンドペーパーを
画面の表面を揮発性油などでふき取るか、サンドペーパーで荒らしたり、凹凸をつけながら絵具をのせます。
サンドペーパーは100番~400番くらいが使いやすく、大きい数字になるにつれ目が細かくなります。
剥がれた絵具層は全て除去してから次の絵具をのせるか、ひどい場合は専門家に依頼してね
サンドペーパーは画面の油分が多すぎて絵具のノリが悪いとき、表面をあえて荒らして使うこともあるよ
ケース3 色が変色してきた
顔料や油など、多様な素材が酸化し、色が変わることがあります。黄変しやすいニスは多少色が加わり、味や深みが出てきたな、という程度ならいいいのですが、本来の色彩とは明らかに異なる変色は問題です。
黄変になった
黄みを帯びた変色は白色絵具や淡色絵具の部分に特に目立ってしまいます。
原因1 乾性油(加工)を多く使用
スタンドオイルやサンシックンドリンシードオイルなどの乾性油(加工)を多く使っていませんか?これらは絵具に色がつきやすく、黄変の原因にもなります。
原因2 保管状況
作品を長期間暗い場所に保管していませんでしたか?暗く湿気が多い所に作品を保管すると油が変質して黄変します。湿気の多い夏場は特に注意で、カビになる可能性もあるので気をつけましょう。黄変が気になりだしたら、30分~1時間程度日光浴させましょう。
アフターケアをして黄変対策を
きちんと作品を保存していても、ホコリや黄変などは免れられません。定期的なケアとして、揮発性油を柔らかい布などに含ませ軽くふき取ります。きちんと乾燥させた後、タブローで保護します。
また、アクリルやガラス付きの額でヤニやホコリはある程度防げますよ。
褪色(たいしょく)してしまった
時間とともに色褪せてしまうのは仕方ありませんが、顔料が原因のこともあります。耐光性の弱い絵具を使用していませんか?チューブラベルに表示されている「耐光性」を確認し、星の数が多い耐光性が強いものを選ぶと防げるでしょう。
チューブラベルに耐光性が★マークで表示されているよ
ケース4 絵具表面にちりめんジワが寄った
乾燥剤を多く使っていませんか?絵具に乾燥剤をたくさん混ぜるとシワが寄ります。
また、下の絵具が生乾きの状態で上にのせる絵具に乾燥を促進させるものを入れた場合でも起こりやすくなります。乾燥速度の差で表面の絵具が縮んで、細かいシワが寄ることがあります。
シッカチーフ類やアルキド樹脂など、乾燥を促進させるものを混ぜた絵具を使う場合、下の絵具層をきちんと乾燥しているか確かめよう
ケース5 テレピンを長期間保存したら黄変した
日の当たる場所に置いたり、容器のフタが開いた状態になっていませんか?テレピンは空気や日光に晒されると変質し、変色やドロッとした粘性が出てきます。暗所で容器から空気を遮断して保管しましょう。
他にもペインティングオイルが空気に触れると樹脂分がゲル化するなど、油は成分が変化しやすいの。容器はしっかり密封して暗所に保管してね
油壺の画溶液はそのままにしないでその日のうちに使い切るか、残っていたらきれいにふき取らないとね
また、油は空気に触れると酸化してニオイも変化するから、ニオイがひどくなったら使用を避けてね
まとめ
画溶液にはさまざまな素材が含まれており、中には強い溶剤や酸化すると成分が変化しやすいので扱い方は注意したいですね。使用方法を確認してから新しい画溶液にもチャレンジしてみてくださいね。