黒よりも深い黒。ターナーのアクリルガッシュ、暗黒ブラックをみなさん知っていますか?黒い絵の具はどれも大差ないと思っていたら、大間違いなのです。そこで、
黒すぎるといいことあるの?
他の絵の具と比べてどんな特徴があるの?
そんな疑問が出てきます。この記事では暗黒ブラックの特徴や使い方を詳しくみていきたいと思います。
暗黒ブラックとは?
暗黒ブラックはアクリルガッシュジェットブラックを超える、さらなる黒さを追求し発売されたターナーの絵の具です。
私たちは物にあたって反射する光を「色」として認識します。例えば、リンゴにあたった光は赤い色だけを反射して目に届くため赤く見えます。その他の色は吸収され、反射しないので見えません。
ところが暗黒ブラックは多くの光を吸収し光を反射させないので、真っ暗に見えるのです。
今まで、ありそうでなかった、光を反射させない絵具・暗黒ブラック。彩色の新しい可能性や表現が広がるはずです。
どんな点に注意すればいい?
通常のアクリル絵の具と同じように使用できますので、紙だけではなく木や石にも塗ることができます、その特性を活かしてうまく表現するには3つの注意点があります。
水に濡れないように
アクリル絵の具は早く乾き、いろんな素材に塗布できますが、一度乾けば水には侵されないものの、それなりに水に濡れると耐水性ではないので台無しになってしまいます。雨に濡れたり、布に描いたものは洗濯すると顔料が弱まってしまい効力が発揮できませんので注意しましょう。
対策としてはワニス(バーニッシュ)と呼ばれる保護液です。トップコートとして乾いた作品に塗装すると、雨(酸性雨)や紫外線、ホコリから守ってくれます。スプレータイプやツヤ消し、つや有りなど目的用途がさまざまなのでぴったりのものを選びましょう。
表面保護の際はもともとの艶消し質感が変わってしまうことがあるよね
ワニスの特性を理解して使用方法を確認しながら利用しましょうね
乾いても手に触れないように
アクリル絵の具で描いた作品は経年劣化もあれば保管状態によっては作品が変化します。また、皮脂や汚れのついた手で作品に触ると、余分なツヤができたり顔料が劣化しやすくなるので注意しましょう。
暗黒ブラックは強力な顔料なのでお子さんや肌が弱い人も触れないようにしてくださいね。
塗膜を動かすと割れることも
アクリル絵の具は塗膜が硬いため、特に厚塗りをした場合はひび割れを起こしやすい特徴があります。紫外線や外的刺激により、ひび割れや表面が剥がれたりすると顔料の効力が発揮できません。
描く素材に定着しやすくする地塗り材(下地)や乾燥を防ぎ、紫外線やホコリから守るトップコートを利用すると綺麗に作品を保てやすいです。
暗黒さを確認してみよう!
普通のブラックカラーとどう違うのか、その違いを見ていきたいと思います。
他の黒との違い
右はアクリルガッシュ ジェットブラック、左が暗黒ブラックです。よーく見ると、ジェットブラックのグレーっぽい黒さが分かります。
同じブラックでも黒に違いがあるのですね。マンセル値を見るとジェットブラックはN1.5、暗黒ブラックはN1.0です。ちなみにマンセル値は 色の明るさを示し、最高明度の白を10、最低明度の黒を0とし、数字が低いほど黒さを表します。
光を外に逃がさない
こちらはアルミホイルに暗黒ブラックを塗っています。何も塗っていないアルミホイルは光を反射するのに対して、塗ったところは、光が反射せず、余計な色が目に届かないので、四角く穴が開いたように真っ黒に見えます(ブラックホールのよう)。
他のアクリル絵の具を塗ってみると…
違いを比較すべく、他のアクリル絵の具を塗ってみました。水で薄めず塗り、乾いたところを見ると光が反射して、白っぽく見えてしまいます。
アクリル絵の具はムラが出ることなく満遍なく綺麗に濡れますが、光や素材によって印象が変わります。暗黒ブラックはアルミにできたシワなどの多少の凹凸具合もあまり影響なく光にごまかされない様子です。
なるほど、暗黒ブラックと普通のアクリル絵の具の顔料の違いを実感しました。
どんな表現に使っている?
さっと塗っただけでこの黒さ。特別感があるのでせっかく使うなら普通のブラックとは違う使い方をしてみたいですね。そこで、暗黒ブラックならではの使い方を紹介します。
プラモデル系など細かい塗装に
紙だけでなくプラスチックにも塗装できるので、模型のパーツなど細かな部分にも塗りやすく最適です。少ない重ね塗りで済みます。黒同士、重ねた異素材の境目が分からなくなるまでダークなので作品のクオリティにこだわれそうです。
目や表情に深みをつくる
動物・人の表情や印象を決める目の黒さ、体の色は重要です。グレーやダークブラウンではなく、吸い込まれそうな黒にすると、存在感が増し、黒がポイントカラーにもなれます。フィギュア系なら、安っぽいテカリがなく高級感のあるマットな仕上がりに。
宇宙系の黒い表現が映える
銀河のように吸い込まれそうなブラックはやはりアート表現でも際立ちます。キャンバスに引き締まるような黒さがあると、輝きや薄いカラーとの対比で作品の深みが増します。世界観が広がるのではないでしょうか。
【まとめ】色々な制作・用途で試そう
光を吸収する特性を生かして、黒より黒いカラーをさまざまな作品で体感してみてくださいね。色彩表現となると、黒はあまり使う機会はないかもしれませんが、暗黒ブラックはポイントカラーやメインカラーとして、主役級で使いたくなります。塗膜は弱い点に注意して、いろんな使い道を楽しんでくださいね。