みなさん、分離水彩絵具は知っていますか?クサカベから発売されたハルモニア透明水彩絵具はひとつの絵の具を塗ると異なる色と色に分離され、独特なグラニュレーションカラーになります。ときどき、水彩絵の具を混ぜると、
「色が微妙に分離されて、綺麗に混ざらない!」
ということがありますよね。分離水彩絵具はその特徴を生かした独特の美しいカラー表現ができるのです。この不思議な絵の具を実際に試してみたいと思います!
グラニュレーションカラーって?
水彩の顔料の粒子が大きかったり、凝り固まって大きい塊になると紙表面の凹みに溜まり、ザラザラとしたマチエールを(質感)をつくります。グラニュレーションとはそんな現象のことです。
水彩絵の具には粒状化しない混ざりやすい色と、ザラザラとした質感の粒状化する色があるのです。
そもそも分離色ってどういうこと?
「調和」を表す色合いから生まれたハルモニア透明水彩絵具は、対極の色同士がミックスされています。でも塗ると違和感なく調和された幻想的な色になります。
たとえば、明るい緑色のミントとエメラルドグリーンが混ざったような「ミントベリル」は絶妙に分離した美しい色合いを見せます。また、ざらっとした独特のマチエールを作り出すので色の変化や質感を1本で楽しめます。
顔料の粒子の大きさが違うと、絵の具はうまく混ざらない特徴があるんだよね
そうそう、カラーが分離するのは困った現象だったけれど、その面白い特徴を生かして1本の絵の具になったんだね
粒子の大きい顔料ほど大きく分離するから、分離色のカラーによっても分離具合、雰囲気は違ってくるかも
完成された配色の分離色なら絵の具を混ぜて作る手間もいらないし、たくさん使えるから便利だね♪
どんなカラーバリエーション?
2022年4月に誕生したばかりのハルモニア透明水彩絵具は12色です。カラーの特徴はそれぞれこんな感じです。
01パープルスピネル
パープルスピネルのイメージは煌めく尖晶石。青紫+うっすら透明感のある水色でアジサイのような趣のあるブルーです。
02スターリーウィンター
スターリーウィンターのイメージは冬の星空。澄んだ空気の中に星が雲を照らすように。くすんだ群青と淡い紫+薄く茶色がにごったような感じ
03ダスクスカイ
ダスクスカイのイメージは夕暮れの空。濃い青紫+くすんだ青みの灰色+暗いオレンジでとても深みのある優しいダークカラー。
04ウィッチボルドー
ウィッチボルドーのイメージは魔女の赤ワイン。こげ茶系のワインレッド+グレーがかかった青色をほんのり感じる、大人の深い赤み。
05サンライズブロッサム
サンライズブロッサムのイメージは朝日に目覚める花。ピンクの入った赤紫+青みのある紫。華やかでややビビットを感じる分離色。
06ブルーホール
ブルーホールのイメージは神秘的なブルーホール。ウルトラマリンブルーとー+スモーキーな青で鮮やかで透き通った美しい海のようです。
07ミントベリル
ミントベリルのイメージは青みの緑柱石。黄色みがかかった明るいターコイズの青+コバルトグリーンのような明るい緑。
こちらはくすみがなく、クリアで明度がありますね。
08オリーブサファリ
オリーブサファリはイメージはアースカラーオリーブ。明るいカーキ色+ほんのり黄色+少しだけ茶系を感じます。明るすぎず落ち着いたオリーブ色。
09キャッスルグリーン
キャッスルグリーンのイメージはお城の蔦。モスグリーン+淡い青緑。明るい渋みがどこか懐かしく、落ち着いた和カラーのよう。
10アークティックオーシャン
アークティックオーシャンのイメージは北極の海。アッシュがかかった青緑+淡い灰色+少しだけブラック。ミルキーな寒色はどこか優しい雰囲気。
11フォグアッシュ
フォグアッシュのイメージは青鈍の霧。深みのある青+明るい緑+灰色のような薄めの黒。アークティックオーシャンをよりダークにした感じです。
12ダークネスサンド
ダークネスサンドのイメージは仄暗い砂。砂色のような淡い灰色+淡いブラック+オレンジが入ったこげ茶
一言で茶色と言い切れない、複雑で深みのある色です。とってもシブいですね。
みなさんはどんなカラーに見えますか?水の量や紙によっても雰囲気が変わる分離色。繊細で儚げな色が多く、落ち着いたくすみ色から彩度のある色も魅力的で迷います。
どんな色が見えてくるかじっくり観察をしながら彩色できるね
水の量や紙の質感で色の雰囲気が変わってくるから、乾く前と乾いた後と2度楽しめるよ
綺麗に表現するためのポイント
分離水彩絵具は普通の水彩絵具と使い方は同じなのでしょうか?もちろん同じように使ってOKですが、綺麗に表現するポイントは2つ。
水をたくさん使う
分離色をキレイに分離させるにはたくさん水を使うのがおすすめです。水を多く使うとにじみが広がり、色が分離しやすいのです。
最初紙を水だけで濡らして絵の具を垂らしていくウェットインウェットもおすすめ。分離させたくない時は水を少なめに。
分離しやすい紙を使う
水分を吸収しやすい、専用の水彩紙の使用がおすすめです。水彩紙といってもコットン紙やパルプ紙、細目・中目・荒目と表面のざらつきによって見え方が変わってきます。好みがありますので色々な紙を試してみましょう。
ちなみに、今回は、キャンソン・ヘリテージ水彩紙を使用しました!
細目・荒目と質感は様々ですが、絵の具のコントロールがしやすく、波打ちがない美しい仕上がりです。水をたっぷり使用しても顔料を美しく引き出し均一に散布できたので作品を大切に保存したくなります。
動画で彩色・カラーイメージもできますよ↓
実際に試してみた
そして実際に絵の具を試してみました。使用したのはブルーホール。
最初は水を少なめにし、徐々に水を加えてのばすと色が分離していくのがわかります。
乾く前
塗りはじめ、乾く前は不透明な感じで
これが分離絵の具?普通の絵の具のよう。こんなものかなー?
と思ったのですが
乾いた後
乾くにつれ、絵の具の濃度の変わり目には色の分離があらわれ、じわじわと透けはじめます。この変化を見るのも面白いです。絵を描くのもいいですが、ただ塗っているだけでも癒されて満足しました。
ウェットインウェットやにじみ表現など、水を利用しながらさまざまな分離の表現を試してみたいと思います。
まとめ【なんといっても絶妙の美しいカラー!】
分離色がなくても、自分でつくるから大丈夫〜
なんて最初は思っていましたが、自分では生み出せない色もありますし、作れたとしても同じ配分の色をまた再現する自信はありません。。
でも実際に使用してみると、きれいな配色の分離水彩絵具のすごさを実感します。ぜひ試してみてくださいね。