上の絵は、江戸琳派の鈴木其一が描いた「朝顔図屏風」です。金色の背景色に群青色の朝顔がのびのびと描かれています。
日本画と聞くと、浮世絵や襖絵などを想像してなんだか敷居が高いイメージがありますよね。ちょっと馴染みのない分野に感じる人も多いと思います。しかし、伝統的な顔料を使用しながら、素晴らしい技術で描かれる日本画は今や材料がアレンジされ、モダンな画風に変化を遂げつつあります。
そんな奥深い日本画の魅力をご紹介したいと思います。
日本画の魅力はどんなところ?
日本画で使用される顔料の岩絵具は、粒子サイズを調整しながら色調と質感をコントロールできるのが大きな特徴です。そして、絵具のさらりとした質感と、奥深く微妙な色合いが印象的です。
岩絵具や和紙などの天然の素材を生かした表現の美しさは、残念ながら印刷物や液晶画面ではなかなか伝えることができません。荒い絵具の粒子が光り、吸い込まれるような質感を、ぜひ作品を実際に見て確認してくださいね。
100年近く経った作品でも、絵具の輝きが残っているって素材本来の美しさを感じるね
日本画は絵具を作る工程からはじまる
日本画の特徴のひとつに絵具を作る工程があります。絵具の材料には鉱石を砕いて作られた粒子状の岩絵具と接着性を加えるための膠(にかわ)が必要です。重要なこの工程が、それもまた面白さの一つとして捉えるのかによって印象が変わってきます。
岩絵具の粒子一つ一つを自分で編み出す作業は、日本画の一つの表現となります。岩絵具は乳鉢にとり乳棒ですり合わせますが、濃度や粒子サイズによって作品の質感や雰囲気は変わってきますよ。
絵具を作る作業はなんだかワクワクするね
自然の鉱物だから不純物が混入したり色調が若干異なるけど、それがかえって岩絵具特有の深い色合いを作り出しているんだね
日本画と洋画(油彩画)の違い
日本画の定義とは何でしょうか。また、日本画と洋画(油彩画)はどう区別できるのでしょうか。いろいろ疑問は出てきますが、実際のところ曖昧です。確かなのは日本の伝統的な材料や技法を使用した絵であることでしょうか。違いを知るために、ここで日本画と油彩画の違いを見ていきたいと思います。
油彩画の特徴
・絵具はチューブから出してすぐに使える
・キャンバスに直接下描きができる
・絵の質感は油特有のツヤツヤとした表面
・厚塗りができ立体感ある表現も可能
・絵具は油と混ぜて使用する
・筆に絵具が馴染んで塗りやすい(ねっとりとした質感)
日本画の特徴
・絵具を自分で作る(使用後は保存しにくい)
・直接下描きができない
・下描き代わりの工程を要する
・絵の表面はざらつきのある質感
・厚塗りが不要で使用する絵具は少ない
・絵具は筆になじみにくく、フラットに塗りにくい
油彩画と日本画の特徴は全然違いますね。個性がそれぞれあるので別物という感じです。どちらがどのように効率的とかではないんですよね。それでは、日本画について詳しく見ていきたいと思います。
日本画の大きな特徴となる「筆」
テクニックの一つに筆使いがあります。古くからの作品を見ていくと、筆を使いながら線で描き出している作品があります。そのため線の太さや強弱に合わせて何種類もの筆を使っています。日本人は昔から一筆書きなど、筆は書き物として馴染みがありますよね。そんな筆書きは、一度描いたら修正ができません。
油彩画は下描きができ何度も描き直しながら完成に近づけることができますが、日本画ではぼかしたり曖昧にとどめることがでないのです。だからこそ日本画は、大胆で緊張感が伝わるような、キリッとした印象が多いのかもしれません。
筆の種類は用途に合わせて種類が豊富だよ
ぼかしや線・点描きなどどんな表現をするかによって筆を選ぼう
多彩な天然絵具の種類
日本画で用いる絵具の「岩絵具」は使いたい色や明るさを調整しながら、作品を仕上げていく楽しみがあります。例えば、白色なら胡粉(ごふん)と呼ばれる天然素材の原料を使用していきます。胡粉(ごふん)は、牡蠣(かき)の貝殻から作られているので、不純物の残留で濁りのある白色に見えますが、下地の役目や様々なバリエーションを与えてくれます。
伝統色の名前
他にも、例えば下記のような和名の色があります。
なんだか読み方からして難しいですが、ルーツの奥深さ、日本語の美しい響きに惹かれます。そして、日本人の感性の深さを感じます。岩絵具の色ははっきりした原色というよりかはくすみの入った深みある色を多く見かけます。これは、水彩などで作りにくい微妙な色合いです。ちなみに、絵具作りに不安を感じる人は、チューブ絵具もありますので膠で絵の具を溶く手間が省け、気軽に初められますよ。
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まとめ
いかがでしたでしょうか?日本画は魅力がたくさんありますね。続いては、日本画の描き方をみながら、実際にはじめてみましょう!