油彩画を描く上で欠かせないのが画溶液です。画溶液の選び方ひとつで作品の仕上がりが全然変わってきます。
「クサカベ」の画溶液は初心者向けのペインティングオイルから特殊なオイルまで揃っていますが、かなりの種類があるので迷ってしまいますね。
そこで、どんな種類のものがあるのか、オイルの違いを詳しく見ていきたいと思います。
画溶液の特徴は大きく4種類に分かれる
画溶液はペインティングオイルの材料となる基本素材、画面修理や定着させるために使用する補助材料、画面の質感を調整する描画オイル、仕上げニス用の画面保護材の4つに分かれます。
こちらのブログでは「基本素材」と「補助材料」を詳しく見ていきたいと思います。
基本素材はオリジナル画用液を作るアイテム
絵具に混ぜて様々な効果を発揮する基本素材(溶き油)の種類は、乾く速さや樹脂の特徴で5種類に分類されます。
① 乾性油(かんせいゆ)
乾性油は、絵具の練り調子やのびをよくしながら画面への定着を強め、油絵特有の艶や透明感を与えてくれます。そして顔料を画面に固着させる成分が練り込まれているのが特徴です。
リンシードオイル
亜麻の種子より搾油した、流動性があり乾燥が速い乾性油で少し黄味があります。乾燥後の塗膜はカラッとして強固に。生の植物油のため、濁りが発生するときがありますが、使用効果に変わりはありません。
ポピーオイル
淡色で黄変しにくい植物性の乾性油です。リンシードオイルに比べて乾燥が遅くなります。黄変がしにくいため、白や淡色など、明色描きは表現しやすいです。
リンシードオイルとポピーオイルの使い分けって難しいね
基本的に白画面の多い作品には黄変の少ないポピーオイル、そのほかは塗膜の丈夫なリンシードオイルという使い分けがシンプルね。
細かく使い分けしなくても黄変を避けるか、塗膜のじょうぶさをとるかよね。
②加工乾性油
乾性油が原料から搾油しされ精製したオイルに対し、人工的な加工をしたオイルを加工乾性油といいます。加工法によって乾性油とは違った性質があります。
スタンドオイル
リンシードオイルを真空で加熱加工されたオイルです。ハチミツ状の粘性があり、乾燥後の塗膜は強じんで光沢があります。
サンシックンドリンシードオイル
リンシードオイルを日光照射下に長時間さらし、酸素を吸収させる方法で製造したオイルです。乾燥が早く、強い光沢画面になるのでワニスとしても使えます。
絵具に混ぜると粘りが出るので、筆目を消し陶器の肌のようなマチエール表現になります。
乾性油・加工乾性油の描き始めの分量は揮発性油の量を多く乾性油を少なめに、仕上げに向けて徐々に乾性油の割合を増やしていくよ
③天然樹脂
天然樹脂は樹木から搾取されるヤニ状物質(バルサム)をそのまま製品化しています。揮発成分は5~10%、ガラスに近い透明な塗膜を形成し、筆あとを残さずに横広がりに伸びていく性質があります。乾燥は遅く、黄変、もろさを伴う塗膜になるので、たいていは他の樹脂と併用されます。
ベネチアテレピン(ベネシャンターペンタイン)
ヨーロッパカラマツの木芯部より採取される松脂で、ヨーロッパ中部のチロル地方が主産地です。画面に光沢と透明感を与え、乾燥が遅く、黄変の性質があります。そのため白色や淡色は控えめにしましょう。基本的な使い方は乾性油+揮発性油と組み合わせて使用します。
④樹脂溶液
伝統的な樹脂溶液は、絵具に光沢とのりの良さを与えます。
ダンマルバニス
伝統的な植物性の樹脂溶液で、絵具に光沢と絵具ののりの良さを与えます。ニス、テレピンなどと溶かして使うので、濃度が調整しやすいです。
マスチックバニス
ギリシャ産のマスチック樹脂をテレピンに25%で溶かした樹脂溶液です。絵具にのびの良さを与えることから、細密描写に有効です。穏やかで優雅な光沢画面に。
ダンマルバニス、マスチックバニスは他のバニスとどう違うの?
全て樹脂33%のテレピン溶液で、他には何の添加物もない天然樹脂よ。ちなみに「クリスタルバニス」は合成樹脂として分類されるの
⑤揮発性油(薄め液)
揮発性油絵具や乾性油を薄めるときに使います。水のように空気中に揮発して乾燥するので、固着力がほんどありません。
そのため、リンシードオイルなどの乾性油を接着成分として混ぜながら使います。
テレピン(ターペンタイン)
松脂を蒸留・精製した揮発成分でサラサラとした流動性があり、時間の経過と共に空気中に揮発してしまいます。
テレピンのみで溶いた絵具は固着力が弱いので下描き以降は植物性溶き油を加えないと後日画面が剥落することがあります。リンシードオイルやポピーオイルを軟らかくするときの溶剤、またはワニス類の溶剤としても使用します。
時間が経つにつれて空気中で蒸発するなら開封すると保存しにくいのかな?
容器の半分くらいまで使用したもの、密栓が不充分なものは空気にふれて徐々に変質するかも。変質したものは蒸発しきらずにべたつきを残すの。使い残しのテレピンはべたつきがないのを確認してから使ってね
ペトロール
石油より採取した溶剤を分留・精製した揮発性溶き油です。テレピンより穏やかに蒸発し溶解力もゆっくりです。樹脂状物質を残さないので黄ばみの心配がありません。
ペトロールで溶いた絵具は固着力が弱いので、植物性溶き油を加えましょう。植物性溶き油やワニス類の薄め液として使えますが、油脂や樹脂に対する溶解性はやや弱いので一部ワニスを白濁させる場合があります。
乾性油と揮発性油を混ぜるなら、割合はどのくらいがいいかな?
乾性油が4とすると揮発性溶剤が6の割合ね。描き始めから中描きにかけては、さらに揮発性溶剤で薄めたものがいいね
画面修理や定着用に使用する補助材料
定着剤と油絵具の剥離剤を総称して補助材料といいます。定着剤とは、絵具等と描く素材を定着させるものです。剥離剤はパレットやキャンバス上の乾燥した油絵具を除去するもので、定着剤とは用途が異なります。
フキサチーフ(定着液)
木炭・鉛筆・コンテ等の粉末状色材用の定着液です。主に木炭画、パステル画等に使われますが、木炭で下描きをして、これをフィキサチーフで仮固定して油絵具で描き込んでいけます。液体の他にスプレータイプもあります。
ストリッパー (油絵具剥離剤)
乾いてしまった絵の一部分を直したいときや絵具が固まってしまったの際、修復とは反対に画面を壊す画用液になります。
ただ、キャンバス全体を剥がして再生させるのはお薦めしません。労力とキャンバス状態によっては新しいキャンンバスを買った方が早いですよ。
注意として、熱源の近くでは使わずに換気のよい場所で皮膚や粘膜につかないようにしてください(有害性が高い画溶液です)。
ストリッパーを使って画面の一部を剥がす
①ナイフや筆ではがしたい部分にストリッパーを塗ります
②2~3分程度で絵具がふやけて浮いてきます
③ナイフで浮き上がった絵具をかき取ります
④画面に残った絵具を布や紙でふき取ります
リムーバーK(油絵具剥離剤)
乾燥や固化した油絵具、アクリル絵具などを除去するための非塩素系の絵具除去剤です。
不揮発性なので、蒸気の吸入による人体への影響が低く、あまり匂いません。また、生分解性があり、微生物の働きで無害な物質に分解されるので環境に優しいです。
修正にもテクニックがいるね。それに修正用の画溶液は強い溶剤だから取り扱いに注意が必要だよね
傷んだ絵の修復は専門家に相談が安心ね。古い絵は傷んでいたり、割れかけたり絵具がもろい状態だからニスの使い方を間違えると作品を台無しにしてしまうよ
まとめ
オイルの基本素材と補助材料は以上になります。使用感の違いや、制作スピードで選ぶ画溶液は異なりますので自分にぴったりのものを見つけてくださね。
残りの描画オイル、画面保護材の画溶液については「描画オイルと画面保護剤」ブログに続きます。